-平成28年11月30日(水)- クランクイン

ファーストショットは小笠原先生の往診風景。


 最初に向かったのは、3年前のテレビの取材でも訪れたお宅だった。当時99歳だった松子さんは今101歳。この12月には102歳になる。小笠原先生は、もう10年に渡って週に1回のペースで往診を続けている。

きっかけは松子さんが肺炎を患ったこと、当時はかなり厳しい状態だったそうだが、何とか命を取り留め、現在に至っている。

毎週水曜日の午後に小笠原先生の顔を見て話をすることが楽しみになっていると松子さんはいう。

 

 往診は慢性呼吸不全を患う95歳の八千代さん、誤嚥から食事が取れず重篤な症状を来した施設で暮らす98歳の十和子さんと続いた。

 

 この日最期に訪れたのは、末期のガンを患っている92歳の志津子さん。3年前に亡くなった彼女の連れ合いを自宅で看取ったのも小笠原先生だった。

家族の願いは「自宅で最期まで」ということ。この日から仕舞いに向けての日々が始まる。しかし、それは決して死の準備ではなく、一日一日を佳く生きるためのものだ。

小笠原先生は患者の言葉に丁寧に耳を傾け、彼女の思いを全身で受け止める。聴くことによって彼女の不安や痛みが穏やかになるということが見て取れる。

ただ問診をし、聴診器をあてて診察する、注射などによる薬剤投与の治療を行うということでは彼女の心までは癒やすことは出来ないし、彼女の思いに寄り添うことも出来ない。

 

 診察を続ける小笠原先生の姿に、近代ホスピスの母と呼ばれるシシリー・ソンダース女史の言葉を思い出した。

「Not Doing But Being」まさにこの言葉にぴったりの光景が私の目の前にあった。

 

※個人名は全て仮名です。

(溝渕雅幸)