四万十撮影日記 -序-

小笠原望先生と初めて会ったのは今から3年近く前の平成25年1月、テレビのインタビュー番組の事前取材が目的だった。


 

 在宅看取りに取り組んでいる医者であるという事前の知識は多少あったモノの直接会って話しを伺うにつれ、小笠原先生の医療活動のみならず、人間・小笠原望の魅力に深く引きつけられたことを今も鮮明に覚えている。

 そしてこの時、「仕舞い」という四万十川流域の人々が、人生の幕を引くときに使う言葉の持つ奥深さにも改めて触れたのだった。

 

小笠原先生の魅力とは、前作「いのちがいちばん輝く日」の細井順先生や映画の監修をお願いした柏木哲夫先生にも共通する「人間力」に他ならない。

「人間力」とは抽象的な言葉だが、私は「死」を看取るには、病気ではなくその人そのものを診ることが出来なければならないと、考えている。また患者だけではなくその家族の思いも丸ごと受け入れることが必要だ。

佳い看取り、佳い仕舞いは、単に医者としての患者や患者家族との関わりだけでは実現しない。そこに必要なことは、医者である前に人間であるということ、即ち医者の力ではなく人間の力が必要とされるのだ。

 

 元来医者嫌いが身に染みついている私にとって、小笠原先生は、細井先生、柏木先生と同様に医者という枠を超えた存在だったからこそ、今回の映画企画が芽生えたのだと思う。

 これから始まる取材撮影では、私が感じた小笠原望先生の人間的な魅力を如何に写し撮ることが出来るか?が問われる。さらに人間力の源泉は何か?ということも・・・。

 そして、雄大な四万十川の自然と川と共に生活する流域の人々の「いのち」を小笠原先生の視点を通じて見つめて行きたい。

(溝渕雅幸)